著名な予言者がいました。ある日、その予言者がとんでもない予言をします。
予言:2XXX年、太陽が大爆発を起こして地球は滅亡する
これが真実かどうか見極めたい。そう思って予言者に質問しに行きました。質問A:その予言と、質問Aの答えの真偽は一致しますか?
その予言者の回答は「はい」でした。
この時点ではまだ、予言も質問の答えも正しいか間違っているかわかりません。予言者が嘘をついている可能性もあります。そこで質問の答えが「本当だった場合」「嘘だった場合」のそれぞれについて検証し、予言が正しかったのか、間違っていたのかを確かめたいと思います
「一致する」のが本当(真)なら、「真」と一致するのは「真」。従って予言は正しいことになる。
「一致する」のが嘘(偽)、つまり一致しない。「偽」と一致しないのは「真」。すなわち、予言は正しかったことになる。
(i) (ii) より、予言は正しかったことが証明されました。残念ながら、2XXX年に地球は滅びます。
なぜでたらめを言っても「真」になるんだ!?
ポイントは、質問Aの中に質問Aの、つまり自分自身に関する言及があるところです。このようなものを「自己言及文」とか言います。これを応用すると、色々と厄介な問題が作れます。
命題B 『命題Bは「真」である』
「真」であると言っている内容が「真」ならば、命題Bは「真」。(i)に矛盾しない
「真」であると言っている内容が「偽」ならば、命題Bは「偽」。(ii)に矛盾しない
どちらも矛盾しないため命題Bは真か偽か、わからない(どちらでもよい)。この場合は特に何も起こらない。ではこうしたらどうか。
命題C 『命題Cは「偽」である』
命題Cが「真」だとすると『命題Cは「偽」である』ことになる。これは(i)に矛盾する
命題Cが「偽」だとすると、『命題Cは「偽」ではない』ことになる。これは(ii)矛盾してしまう。
「真」と仮定しても「偽」と仮定しても、矛盾してしまった。このように、真でも偽でもない文章が存在する!!こうした文章(自己言及文)に関しては、偽であることが偽であっても、真であるとは言えないのである。
さて、予言の話に戻ってみよう。予言を先に「偽」だったとして、同じように考察をしたらどうなるだろうか。
質問(真)と一致するということは、予言は「真」。これは(i)に矛盾する。
質問(偽)と一致しないということは、予言は「真」。これは(ii)に矛盾する。
これは「命題C」と同じ展開である。間違いはここで 『従って予言は真』 としてしまった所であり、『従って質問Aは真でも偽でもない』 とするのが正しかった。