UbuntuでLinuxライフ

コラム

コマンドラインは必要か

有名な俗説のひとつに「Linuxにはコマンドラインが必須」というのがある。
古くからのLinuxユーザーの多くは、ほとんどの操作をコマンドで行うが、
近年ではGUIも発達してきており、かなりの操作がマウスでも可能となった。

もうコマンドなど一切使わなくても問題ないという声や、コマンド無しでは
問題が多すぎるという声など、ネットでも意見が割れている。

ここではLinuxの歴史を振り返り、コマンドとGUIの位置づけを考えたい。

LinuxにおけるGUIとCUI

Linuxが生まれた時点ではGUI環境は用意されておらず、必要ともされなかった。
当時のLinuxはプログラマのためのOSであり、プログラミングをするための
開発環境と言っても過言ではないものだった。

極論すると「viやemacsが使えてgccでコンパイルできる。perl、pythonなども導入可能だ。
君はこの環境にいったい何の不満がある?」という人が多かったのだろう。

しかしLinuxが従来のunixと違ったのは、初心者への普及も行ったということだ。
ここで言う「初心者」とは「ハッカー初心者」であり、今のパソコン初心者とは
別物であるが、ハードルを下げたことでユーザー数が増えたことは事実である。

ユーザーが増えてくるとそれは一つの流行になる。

1998-1999年辺りになると一種の「Linux人気」が話題になる。
同時に、この流れに乗じてLinuxで金儲けをしようとする企業も増えてきた。

しかしLinuxはソース自体は配布されているため、それだけ売っても儲からない。
どうやって金儲けするかというと、インストールやトラブルが起きたときのヘルプ、
すなわち「有償サポート」である。

とはいえハッカーにサポートは必要ない。サポートする側だ。
むしろ何も知らない初心者の方がお客さんとしてふさわしい。
いっそWindows95を使っているような人をターゲットにすればもっと儲かるかもしれない。
そう考える企業も出現した。

「パソコン初心者」に使ってもらうためには、わかりやすいGUI環境が必要だ。
GNOMEやKDEといった統合デスクトップ環境がインストールされたパッケージも増えた。
使われるようになるとフィードバックなどが起こり、さらに使いやすいものに改良される。

こうしてハードルはさらに下がり、今の「初心者」でも使えるようなOSに変化してきた。

設計思想の問題

こうしてみると、Linuxの土台を作ったハッカーにとってはCUIが全て、
しかし参入した企業にとってはGUIがないと困るという構図が見て取れる。
開発者の中でも設計思想が統一されていないのだ。

末端ユーザーの間でも混乱が起きるのは当然かもしれない。

「Linuxに詳しい人」といっても、カーネルハックを趣味とする人から
単にGNOMEの操作に詳しいだけの人まで様々である。

中でも近年Linuxを始めた人にはGUIしかわからない人もいるが、そういう人たちは
「Linuxの詳しい人」にGNOMEの操作が詳しいことを期待する。

一方、古くから居るLinuxユーザーというのはほぼ確実にハッカーであり、
初心者から質問を受けた時の回答は決まってコマンドによるものだ。
それを聞いた初心者は「Linuxの操作にはコマンドが必須」だと理解する。

ここでWindowsに目を向けてみると非常に対照的である。

Windowsにもコマンドラインはある。

しかしWindowsは最初から非ハッカーをターゲットにしており、
それ故コマンドは徹底して隠蔽してきた。

それこそコマンド数行で出来ることに対しても専用のソフトを用意したりもしている。

Linuxユーザーからすると「無駄な機能」かもしれないが、しかし重要なことだ。
例えコマンド数行で出来るとしても、そこに辿りつくまでに1週間かかるかもしれない。
それを「楽に出来る」と言っていいのかどうかが問題だ。

コマンドラインは必須か?

Linuxには「コマンド数行で出来るのに何でわざわざ専用ソフトを作るのか」
という風潮も存在しており、GUI開発がWindowsほど進まなかったのも事実である。

これはコマンドが強力すぎることも原因の一つかもしれない。

Windowsユーザーも上級者になると自分でソフトを作る人はいるが、
Linuxユーザーの場合、慣れれば慣れるほどコマンドやシェルスクリプトで
事足りてしまうため、わざわざGUIアプリを作る必要がなくなってしまう。

参入した企業や一部の奇特なハッカーにより、一応のGUI環境は整ってきたが
それでもWindowsのGUIには遠く及ばない。

本題の「Linuxにコマンドは必要か」に戻ろう。
もしかすると用途によってはコマンド無しでも全く困らないかもしれない。
しかしコマンド無しで全く困らないというタイプの人は、
おそらくWindowsを使っていた方が便利に違いない。

「無くても困らないかもしれない、しかしコマンドを使わないならLinuxを使う意味は無い」

これを結論にしたいと思う。

追記

しかしここまで書いておいて、自分はほとんどコマンドを使えない。
それでなぜ Ubuntu を使うのかという話だが、これにはバグ#1への抵抗と答えたい。

現在のパソコン市場はWindows一択であり、他の選択肢がほとんどない。
公的機関もWindowsを使っており、書類提出となればMS-Officeが強要される。

こうした状況を打破しようというのが Ubuntu の目標の一つでもある。

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